第9話
ひきこもりに生産性がないなんて誰が決めたんですか
| 来栖嵐 (成田凌) |
転職の魔王様。転職エージェント『シェパードキャリア』の敏腕キャリアアドバイザー。左足が悪く、歩くときは杖をついている。 |
| 未谷千晴 (小芝風花) |
新卒入社の職場でパワハラに遭い3年弱で退職した25歳の求職者。転職活動を始めたが一旦休止し、『シェパードキャリア』のキャリアアドバイザー見習いとして働くことになった。 |
| 落合洋子 (石田ゆり子) |
未谷千晴の叔母で、『シェパードキャリア』の社長。転職活動を休止した千晴をキャリアアドバイザー見習いとして試用している。 |
| 五十嵐君雄 (金子ノブアキ) |
小学校教諭のときに旅行会社勤務の洋子と出会う。ある生徒のことで自分を責めて辞職し、10年間ひきこもりの状態で43歳になり社会復帰を諦めている。 |
転職の魔王様 第9話では、10年間のひきこもりによって社会から断絶した状態にある五十嵐君雄の社会復帰が描かれます。
五十嵐はもともと小学校教諭で、修学旅行の機会に旅行会社の洋子と知り合い、2年ほど交際していた。しかし、担任する学級でいじめに遭っていた生徒を結果的に不登校に至らせた原因が自分にあることを強く責め、小学校教諭を辞職し、ひきこもりの状態になる。
洋子はそれからも度々五十嵐の家を訪れては、彼の社会復帰を支えようとしてきた。五十嵐は10年間のひきこもりによって43歳になり人生に絶望していたが、『シェパードキャリア』の支援をきっかけに気持ちを改めていく。
仕事というものへの向き合い方を考えさせられる内容となっています。

目次
転職エージェントの理念
第9話では、洋子が転職エージェント『シェパードキャリア』を起業した動機が明らかにされます。
そこには、転職エージェントに対する洋子の理念が見えました。また、キャリアアドバイザーとなった千晴の言葉にも理念が見えました。
一人一人に寄り添える
来栖:『シェパードキャリア』を作ったのは、それがきっかけなんですか?
洋子:ある日、転職エージェントっていう仕事を知って、「これだ!」って思った。
一人一人に寄り添う転職エージェントが作れれば、彼の社会復帰につながるかもしれないって。
洋子が『シェパードキャリア』を起業した動機には、五十嵐を社会に戻したいという想いがありました。
転職エージェントもビジネスである以上、成果やスピードが求められるものです。でも洋子は、求職者とじっくり向き合って寄り添うことが許される転職エージェントを実現したかったようです。
現実のキャリアアドバイザーは、「求職者とじっくり向き合ってあげたいけど、会社からは成果を求められる」…こんなジレンマを抱えてそうですよね。
本当は、求職者にじっくり向き合って寄り添ってあげたいという想いを持っているものだと思います。
傷ついた経験があるから寄り添える
洋子:迷える羊を導けるのは迷える羊だった人…と思いません?
来栖はもともと転職活動のつもりで『シェパードキャリア』に面談にきた求職者でした。それを洋子がこの言葉でスカウトします。
来栖には、働けなくなって人生を傷つけていた過去があります。洋子自身も、救いたい人を救えずにいることが傷になっています。
自身も挫折や困難を経験した人だからこそ、他人の痛みを理解して親身にサポートできる。
転職の苦しみを知っている、あるいは一度キャリアにつまずいた経験のある人は、キャリアアドバイザーに向いているかもしれませんね。
第三者だから寄り添える
千晴:家族や親しい人では、愛情があるからこそ近すぎて解決できない問題もあります。
そのために、私たちキャリアアドバイザーという仕事があります。
家族などの親しい人は、「幸せになってほしい」「失敗しないでほしい」という思いから、本人の責任を共有してしまいます。
洋子も親しい人として五十嵐と接するうちに、責任を共有するようになっていました。これが五十嵐にはまた重荷になっていたわけです。
千晴と来栖は第三者だからこそ、洋子が気づけなかった五十嵐の離職理由に気づいて問題解決の糸口をつかむことができました。
転職エージェントのキャリアアドバイザーは、人生を背負っていない立場だから紹介できるし、決断を本人に返すことができます。
良い意味で無責任でいられるからこそ、他人の人生に寄り添える…ということもあるでしょう。
空白期間の見られ方
千晴:たとえば、10年ひきこもってて、43歳だとしたら。
山口:それは…かなり難しいでしょうね。
広沢:親の介護とか、どうしようもない理由があれば企業側にも理解してもらえる可能性はあるけど。
それだけの空白期間があるとなると、雇う方は躊躇するだろうね。
五十嵐君雄のように10年間ひきこもりの43歳…というのはさすがに空白期間が長過ぎますが、一般的な感覚の空白期間はどう見られるのでしょうか。
企業はどう見るのか
- 空白期間に何があったのか。
- 仕事に戻れる状態なのか。
- 同じことがまた起きないのか。
企業は求職者の履歴書にある空白期間を見て、説明がつくことなのかどうかを見ています。
企業には、空白期間による不確実性が見えています。
企業は何を躊躇するのか
- 再発する可能性がある。
- 適応するまでに時間がかかる。
転職で全般的に懸念されるのは、「また同じ理由で辞めるのでは?」というところです。空白期間があると「また働けなくなるのでは?」という不安を持たれます。
職場への適応性も懸念されます。「仕事のスピードについて来れるか」「チームワークはできるのか」「いまどきのツールは使えるか」…など、空白期間で鈍ってしまった仕事の感覚を取り戻すのに時間がかかることに不安を持たれます。
求職者はどう解決するか
- 説明する。
- 非正規雇用から始める。
- 第三者を入れる。
とにもかくにも、まずは説明が必要です。一貫した説明であることが重要です。
たとえば、体調不良の場合は「療養 → 回復 → 再出発」、家庭の事情なら「問題に向き合う → 解消 → 再出発」という今につながる経緯と、今後は働ける状態であるという根拠を説明します。
それでも企業が躊躇する様子なら、正社員ではなく非正規雇用(契約社員・アルバイト・時短勤務)を提案してみてもよいでしょう。企業としては「試せる」ことが安心になります。
で、もう一つ。第三者を入れるというのも企業の安心になります。転職エージェントを利用しているなら、キャリアアドバイザーという第三者にも説明に加わってもらうと心強いでしょう。
仕事が好きって言えるか
洋子:私はこの仕事が好き。誇りを持ってる。
これを言える人って、どのくらいるんだろう?どのくらいの割合なんだろう?って思いました。
- 生活のため、家族のために我慢して続けている。
- 辞めたいと思うことがあったけど、辞める勇気がなかった。
- 他にやりたいことが無かったので、なんとなく今の仕事に就いた。
といった理由で働いていて、「好き」とか「誇り」という言葉を口にするのは気恥ずかしくもあります。
洋子はなんで好きと言えたのか
洋子が自分の仕事を好きと言えるのは、
- 大切な人のために選んだ仕事だから。
- 自分でやると決めて始めた仕事だから。
といったところだと思います。
五十嵐君雄の社会復帰につながれば…という個人的な大義がありました。しかし気づけば、傷ついた来栖や千晴も受け入れているし、『シェパードキャリア』に来た求職者もたくさんサポートしてきました。
個人的な大義で始めた仕事が、結果として社会的な大義になっていることを誇れるのだと思うのです。
洋子が転職エージェントの仕事を好きなのは、「楽しいから」「面白いから」というよりも、「誇りに思うから」というところが大きいのではないかと思いました。
私の経験でも好きと言える仕事は少なかった
私は7回の転職歴があっていろいろな業界・職種を経験していますが、好きって言える仕事は少なかったです。
20代のころに転々としながら経験した仕事は、正直どれも好きとは言えないです。
通信業界でやっていた仕事は好きでした。社内システム運用でプログラミングもデータベースもまるっと任されていたのでやりがいもあったし、自分好みにシステムを作っていける楽しさがありました。
今のウェブの仕事も好きです。自分の頭の中にあることを、自分の言葉で紡いでいくこの仕事は、自分にしかできない、替わりがいない…というところに誇りを感じます。
