第7話
人も会社も、いつだって変わることができるんです
| 来栖嵐 (成田凌) |
転職の魔王様。転職エージェント『シェパードキャリア』の敏腕キャリアアドバイザー。左足が悪く、歩くときは杖をついている。 |
| 未谷千晴 (小芝風花) |
新卒入社の職場でパワハラに遭い3年弱で退職した25歳の求職者。転職活動を始めたが一旦休止し、『シェパードキャリア』のキャリアアドバイザー見習いとして働くことになった。 |
| 落合洋子 (石田ゆり子) |
未谷千晴の叔母で、『シェパードキャリア』の社長。転職活動を休止した千晴をキャリアアドバイザー見習いとして試用している。 |
| 皆川晶穂 (黒川智花) |
新卒入社した製薬会社営業部に8年勤務していたが、業務過多を見過ごす会社に限界を感じて退職。『シェパードキャリア』で転職活動を始める。 |
| 日下部さやか (村川絵梨) |
製薬会社営業部の皆川の先輩。皆川を退職させた原因が自分にあったと責任を感じている。『シェパードキャリア』での面接で皆川と再会する。 |
転職の魔王様 第7話では、人員不足による業務過多で退職することになった皆川晶穂の転職活動が描かれます。
皆川は、新卒入社した製薬会社の営業部でやりがいを感じながら働いていました。
皆川は、1年前に産休に入った日下部の担当業務を巻き取ったことで業務過多に陥ります。日下部が復帰しても、一度巻き取った業務はさほど減らず、そのリソースの偏りを見過ごす会社の姿勢に我慢の限界を感じて退職します。
求人企業データを見ていた千晴は、皆川が勤めていた製薬会社が求人を出しているのを見つけ、『シェパードキャリア』に面接の場を設けて皆川と日下部を会わせることにします。
「産休・子育てのサポート」という聞こえの良い言葉の裏にある、見えづらい現実に焦点が当てられています。

業務過多ハラスメント
会社や管理職側には、部下が健康を損なわないように業務量を調整する責任があります。
一人に業務が集中している状態など、リソースに偏りがある場合は解消しなければなりません。
こういった業務過多の状況を放置することは「安全配慮義務違反」になり得ます。
声を上げるのは難しい現実
来栖:それは辞めるまえに会社に言うべきでした。
「これ以上は抱えきれない、助けてほしい」と、声を上げれば何か変わったかもしれません。
皆川:そう訴えても、「頑張れ」と励まされるか、はぐらかされるかしか、してこなかったのにですか?
来栖:いまみたいに本気で上司に伝えたんですか?
皆川:それは…そんなに簡単に会社が変わるとは思えなかったですし。
来栖は、業務過多の状態で苦しんでいることを会社に伝えるべきだったと言います。
でも現実的には、苦しんでいる本人が声を上げるのは難しいでしょう。
- 業務過多の状態に、異常性を感じなくなっている。
- 疲れ果ててしまって、声を上げる気力も無くなっている。
- 自分一人の訴えで、会社が変わるとは到底思えない。
- 辞めてしまえば関係ないから、何も言わずに辞めるつもり。
皆川は上司に「自分が抱えすぎている業務を分担してほしい」とお願いして声を上げていました。しかし、上司は適当にはぐらかして皆川の声をスルーします。
会社に本気で伝えて、会社に変わってもらおうとすることは、とてもエネルギーが要ります。「辞めるほうが早い」と思ってしまう人は多いでしょう。
産休・子育てサポートの偽善
皆川:私が日下部さんから引き継いでる分、もうちょっと他の人と分担できたりするんですか?
皆川の上司:いやあ、今は無理かな。新しい人が確保できるまでは、今の体制で頑張ってよ。近い内に人材募集かけるつもりだから。
子育てしてる人をみんなでサポートしよう。
ある従業員が産休で休んだり子育てで時短勤務するということは、フルタイムで働けない分だけリソースが失われるということです。
このとき会社がやらなければならないのは、リソースの補充です。組織としてリソース不足を受け止めて、増員しなければなりません。
会社は増員したくない
- 産休は一時的なリソース不足だから
- 人を増やすと固定費が増えるから
- 意外と現場が回ってるように見えるから
皆川の勤めていた製薬会社では、人的リソースを補充しないまま、現従業員だけで分担してしまいました。皆川がほとんどの業務を巻き取り、一人で業務過多に陥ってしまいます。
会社はこんなことを考えていたりします。
「人を増やさなくても回せるんじゃないの?」「人を増やさなければ、その分は会社の利益になる。」
皆川の会社も、「近い内に人材募集かけるつもりだから」と言いつつ、求人を出すことはありませんでした。
会社側による善意の押し付け
皆川:最初は良いことをしたような気持ちになってました。
でもそれが何度も何度も続くと、なんでこんなに頑張ってるのか分からなくなってきて。
「助けるのは当然」という空気が作られてしまうと、周囲のサポートする側が苦しくても何も言えない状態になります。
これにより、サポートする側の負担が無視されやすくなります。
会社が組織として人員不足を解消しなければ、「子育てする人をみんなでサポートしよう」という言葉はただの聞こえの良い善意の押し付けになってしまいます。
会社を変えることは可能か
- 法的リスク: 労働基準監督署の介入や、裁判による損害賠償。
- 人的リスク: 優秀な人材の流出、採用難。
- 社会的リスク: SNSでの炎上や、取引先からの信用失墜。
会社が重い腰を上げるのは、上のいずれかのリスクを感じた時です。
ドラマの乙葉製薬は、人的リスクに直面しました。大切に育てた皆川という社員が退職し、会社はさらに深刻な人員不足に陥っていきます。
大手・大きい会社の場合
大手企業は「コンプライアンス(法令遵守)」と「レピュテーション(世間体)」を極端に嫌います。
個人の訴えに対して、まずは「人事部」や「コンプライアンス委員会」などの専門部署が動きます。マニュアルに基づいた調査が行われ、事実に反していなければ、制度として是正される可能性が高いです。
変われる可能性は高いですが、実現には時間がかかります。 仕組みがしっかりしている分、一度「改善が必要」と判断されれば、全社的なルール変更として定着します。ただし、承認プロセスが多いため、実際に現場が変わるまでには時間がかかります。
現場の管理職レベルで握りつぶされるリスクがあるため、社内の公式な通報窓口を利用するのが定石です。
中小・小さい会社の場合
中小企業は、良くも悪くも「社長(オーナー)」の権限がすべてであることが多いです。
人事部が存在しない、あるいは社長が近い場合、訴えは直接経営層に届きます。社長が「これはマズい」と思えば即日で変わることもありますが、逆に「嫌なら辞めろ」という感情的な反発を招くリスクもあります。
変われる可能性は社長次第。 社長に「労働環境を良くすることが利益につながる」という合理的なメリットを提示できれば、大手よりも劇的に、かつスピーディーに改善されます。
変わる判断は、法律よりも「社風」や「人間関係」が優先されがちです。
