29歳の私は、またしても仕事がなくなってしまいました。
保険営業、製造、運輸、建設、そして移動体通信の派遣──、と一貫性のない職歴を歩み、やっと見つけた自分に合う仕事が「無線の仕事」でした。
ところが、突然の会社合併による派遣切り。
現実的な生き方を選ぶか、やりたい事を追いかけるか、そんな選択を迫られた転職でした。
29歳で転職した理由
29歳のとき、私は携帯電話の無線調査会社で派遣社員として働いていました。
その無線調査会社は、大手携帯電話会社のグループ会社で、3つの部署に分かれていました。
| 部署 | 業務内容 |
|---|---|
| 走行調査 (外勤/派遣) |
新設基地局の無線強度を、現地で車で走行調査し、結果を報告する。毎週、出張する。 |
| ルート作成 (内勤/派遣) |
走行調査のためのルート(地図)を作成する。調査班のスケジュールを管理する。 |
| 解析 (内勤/社員) |
調査班から報告された無線状況を解析し、本社および支社に新設基地局の効果を報告する。 |
私は、派遣会社の求人どおり無線の走行調査班に配置されました。
走行調査からルート作成へ
走行調査班は、毎週のように出張していました。新設された基地局のエリアを車で走行して、車内で無線の効果測定を行います。
調査員3人とドライバー1人の4人一組で出張し、車内で一緒に仕事して、一緒に食事する。
ドライバーと車両を提供しているのは別の協力会社でしたが、一緒に出張するうちに、必然的にこの協力会社の社員やドライバーとも親しくなっていきました。
ただ、私には走行調査の仕事にあたり、致命的な弱点がありました。幼少のころから苦しめられている車酔いです。
走行調査は、後部座席でノートパソコンにデータを記録する作業ですが、とくに山間部では揺れる車内で下を向き続けることになります。
吐きそうになります。
夏季の走行調査に区切りがついたタイミングで、私は勤務先の上長に相談しました。
「車酔いがひどくて続けられません。内勤にしてもらえませんか?」
走行調査からルート作成に配置換えしてもらえることになりました。
ルート作成から解析へ
内勤でのルート作成の業務の方が私には合っていました。Illustratorを使って地図上にルートを描いていくのが主な作業で、一日中、パソコンを使う業務になりました。
この頃から無線への興味が強くなり、社内の休憩所の本棚に並ぶ無線関係の本を少しずつ読むようになりました。
同時に、携帯電話会社の社内資格を取るための勉強を始めました。
働き始めて1年が経つ頃、社内資格を取得すると、今度は社員が担当している解析の業務を手伝うことになりました。
携帯電話の無線の仕事に、はまってしまったのです。
会社合併消滅による派遣終了
無線の解析の業務は忙しく、次々と上がってくる走行調査のデータを解析して、その資料作成に追われていました。徹夜になることもありました。
社員は皆、丁寧に根気よく仕事を教えてくれました。私は、この無線の仕事が気に入って、自分に合っている仕事だと感じていました。
ところが、状況は一変します。
グループ会社同士が合併することになり、私の勤務先の会社が消滅することになりました。
そこで、派遣期間は終了。あまりにも突然で、あっという間に職場が、仕事が消えて無くなってしまいました。
29歳の転職は遅い?20代最後の焦り
またしても仕事が無くなってしまった私は、29歳という年齢に焦りを感じました。
ギリギリ20代であることは、転職では有利なのか?
30代に入ってしまうと転職は難しくなるのか?
もしかして、この転職が最後のチャンスなのではないかと思いました。
短期の派遣で食いつなぐ状況に
派遣会社が、次の勤務先が決まるまでの繋ぎとして、短期間の派遣業務を回してくれていました。
・百貨店本社での棚卸しデータ集計
・ETC開発会社でのテストドライバー
・マルチビジネスの会社でのコンテンツ作成
いろんな仕事を経験できるのは刺激的で面白かったけど、自分の人生がどこに向かっているのかわからなくなるような、完全に道を見失った気持ちになっていました。
職歴がある職種なら評価される
仕事を効率的に探すため、複数の派遣会社に登録することにしました。
そのうちの一つの派遣会社と、登録面談をしたときのことです。IT系の技術者を専門に派遣している、まだ新しい小さな派遣会社でした。
職歴・スキルの確認、仕事紹介のための希望条件などを話し終わったとき、思わぬ提案を受けました。
「人材には興味ないですか?うちで営業をやってみませんか?」
聞けば、営業職を探している最中だと言うのです。
私はそのお誘いを有難く思い、返事は一度持ち帰るということで面談を終えて会社を出ました。
29歳でも、職歴を活かせば転職できる
帰り道の公園で、スーツ姿でブランコに座って考えました。
自分の職歴は、完全に『営業職』なんだな。
と思いました。
保険営業時代の「法人営業」「飛び込み・新規開拓営業」の経験が、29歳になった今でも営業職で評価されていることが分かりました。
「29歳だから転職が難しい」ということはなく、「30歳になったら転職が難しくなる」ということもないのです。
職歴を活かした同職種への転職なら、29歳でも需要がある。
私が、転職のたびに苦しんでいる原因は、職歴にない未経験の『技術職』にこだわっているからに過ぎないのです。

29歳で派遣から派遣の転職|カーナビ事業会社を選んだ
携帯電話会社のときの派遣会社から電話があり、カーナビ事業会社を紹介されました。
勤務先は、大手オーディオメーカーの子会社。業務内容は、カーナビの品質管理。欠員が出て、急いで代わりを探しているとのこと。
正社員で営業職か、派遣で技術職か
この時点で、私の選択肢はこうなっていました。
・IT系派遣事業だけど、業態は人材系。
・無期雇用。営業マンとしてのキャリアに進む。
・営業職。やりたい事とは違う。
・給与は不明。おそらく成績次第で変動。
・誘いがあったということは、内定の確度は高い。
・勤務先はIT系の会社。
・有期雇用。いずれまた転職することになる。
・いちおう技術職。やりたい事には近い。
・時給は悪くない。月給換算で平均的。
・急募の連絡があり、すぐに勤務開始する感じ。
技術職に近づける仕事を選んだ
29歳で転職して分かったこと
29歳でも、これまでの職歴を評価してもらえる仕事があること
自分で納得できる選択をしないと、きっと後で悔やむこと
29歳のときの転職でも、自分を曲げることができず、やりたい事に向かう選択をしました。
「ラストチャンス」や「壁」の言葉の正体
転職において、「29歳はラストチャンス」「30歳の壁」みたいなことを聞いたり、言われたりします。
私自身、29歳になったときは「30歳になる前に転職しなければ」と焦っていました。
しかし、実際に転職活動をしてみると、29歳という年齢だけで仕事がなくなるわけではありませんでした。
私の場合は、これまで経験してきた営業職なら、29歳でも声をかけてもらえました。
一方で、職歴にない技術職を目指していたため、そちらでは苦労しました。
私が29歳で感じた「壁」は、年齢そのものよりも、これまでの職歴と、やりたい仕事の食い違いだったのだと思います。
「自分で納得できる選択」が最優先
転職における選択は、自分で納得できるかどうかに終始すると思います。
私の場合は、正社員で営業職に就く選択を蹴って、技術職の道を選びました。
自分で納得できるからです。
場合によっては、家族や、周りの意見に流されて転職の選択をすることがあるかもしれません。もし、自分で納得できる選択じゃないなら、その人たちを説得しなければなりません。
「一時的に給料が下がるけど、必ず給料を上げてみせるから。」
「休日を取りにくくなるけど、平日に時間を作るようにするから。」
自分で納得して選んだ道なら、自分の手で正解にしていくしかないと思います。
次回は、

